ヤミ金融から借りてしまった場合の対処法
1度でもヤミ金融から借入をしてしまうと、悪質な取り立てや嫌がらせにより、生活が壊滅的な状態となるおそれがあります。
この記事では、
- ヤミ金融と合法の金融業者を見分ける方法とは?
- ヤミ金融業の様々な形態とは?
- 専門家にヤミ金融に関する相談をする場合のポイントとは?
- 闇金に借りてしまった場合の適切な対処方法とは?
について、司法書士が詳しく解説します。

目 次
1 いわゆるヤミ金融とは
(1)ヤミ金融業者とは貸金業法の登録を受けていない業者
貸金業を営む場合、貸金業規制法に基づき、国(財務局)や都道府県へ登録をしなければなりません(無登録で営業している貸金業者には刑事罰が科せられます )。それにもかかわらず無登録で貸金業を営む業者は、ヤミ金融業者と呼ばれています。
また、貸金業者は、「出資法」により、貸付けを行う際の金利の上限は「年20%」と定められています(これを超える違法な金利で貸付けを行う貸金業者には刑事罰が科せられます)。
その他「利息制限法」では、貸付額に応じ、金利は「年15%~20%」が上限となっています(これを超える違法な金利で貸し付けを行った場合、当該契約は民事上無効です)。
- 出資法の上限金利(超過すると刑事罰):20%
- 利息制限法の上限金利(超過すると民事上無効):貸付額に応じ15%~20%
これまで、貸金業者の場合、この出資法の上限金利と利息制限法の上限金利の間の金利帯でも、一定の要件を満たすと、有効となっていましたが、これが、いわゆる「グレーゾーン金利」です。
なお、平成22年6月18日以降、出資法の上限金利は20%に引き下げられていますので、現在、グレーゾーン金利は完全に撤廃されています。
このように、利息制限法の上限金利を超える金利帯での貸付けは民事上無効で、行政処分の対象にもなり、出資法の上限金利を超える金利帯での貸付けは、刑事罰の対象となります。
そのため、仮に貸金業の登録を受けていたとしても、上記法律に違反するような高金利で貸付けを行ったり、悪質な取立てを行ったりする業者も、全て「ヤミ金融業者」と呼ばれています。
実際に、国や都道府県知事の登録を隠れ蓑にして、暴利を貪る貸金業者は存在しています。
しかし、「ヤミ金融業者」と一口にいっても、その業態は以下のとおり多種多様化しています。
(2)ヤミ金融の種類
➀ 090金融
何処の誰れが貸し付けを行っているのか全く分からないような、携帯電話のみで貸し付けを行う貸金業者です。
➁ トイチ業者
東京都の登録業者で登録の更新を1度もしていない業者、東京都(1)第○○号という登録番号から「都1」トイチといわれています。一応は貸金業の登録は行っているものの、実際は何ら法律を順守することなく違法な高利での貸し付けを行っている貸金業者です。
➂ システム金融
主に事業者を相手に手形や小切手を担保に取ったり、取引先に対する売掛金の債権譲渡通知書や白紙委任状などを取って違法な貸し付けを行っている貸金業者です。
差入れた手形や小切手の期日が近づくと、最初の業者は厳しく取立てを迫る一方、別の業者から融資の案内が届き、借り換えを勧誘してきます。複数の業者が借り手の情報を共有しており、同一の借り手に対し、次々と融資を行い、違法な高金利の借入れを雪だるま式に膨れ上がらせ、暴利を貪るというのがシステム金融の手口です。
➃ 年金担保金融
貸金業法上、貸金業を営む者は、貸付けの契約において、借主の公的給付(年金など)を返済のあてにしてはいけないことになっていますが、年金担保金融は、年金を扱うような団体を装い、年金手帳や銀行口座等の預金通帳やキャッシュカードなどを担保に貸付を行うヤミ金融の手口です。
このような業者に、年金手帳や銀行口座の預金通帳やキャッシュカードなどを渡してしますと、年金を受け取ることができなくなったり、預金口座から勝手に金銭を引き出されたりするなど、悪用されてしまう可能性があります。
➄ リース金融
借受人から自動車や家具一式等を買取り、その後、リース料として違法な高金利の支払いをさせ、その対価として、借り手が自動車や生活用品などを継続して使用する契約をさせる業者です。
同じ仕組みで、リースバックという合法的な融資方法もありますが、リース金融は「利率」が高額なため、ヤミ金融業者であることがわかります。
➅ ソフトヤミ金
恐喝的な取立てをせず、見た目も普通のサラリーマン風で、対応も親切なヤミ金融業者のことをいいます。
融資の際に審査はありませんが、借りられる金額は数万円で、金利はヤミ金融業者と同じで法外です。
2 専門家への相談の際のポイント
上記のような090金融は、貸付と返済のサイクルが非常に短いのが特徴です。1週間から10日で返済期日が来るため、返済予定日に返済金の都合がつかず、今すぐに着手して欲しいという相談者は多くいらっしゃいます。
そのため、090金融からの借り入れを行っている相談者からの依頼には、何よりも迅速性が求められます。
そこで、ヤミ金融からの借金について、専門家へ相談に行く際には、限られた相談時間を有効的に利用し、早急に業者へ対応してもらえるように動くことが重要です。
借入先が、090金融の場合には、消費者金融(サラ金)やクレジット会社のように、こちら側から取引履歴の開示請求をしても、その取引の明細を提出することはほとんどありませんので、相談者は、次の事項をまとめたもの(ヤミ金融の借入先のリスト)を作成して持参するようにしてください。
- 借入先の「名称」(通称)
- 借入先や担当者の「電話番号」
- 借入先や担当者の住所がわかる場合は「住所」
- いつ、いくら借りたか
※「契約上の貸付金額と、実際に手元に渡された金額」がわかる場合は、それも記入してください。 - いつ、いくら返済したか
※「返済したときの銀行の振込明細書等」が手元に残っている場合は、それも持参してください。
3 ヤミ金融業者への対応
相談者から借り入れの経緯や原因について事情を聴きとった後、実際にヤミ金融業者へ、代理人として相談者の債務整理に介入した旨を電話で連絡をします。
もし、ヤミ金融業者の住所やファクシミリ番号が判明しているようであれば、受任通知書を送付します。
ヤミ金融業者に対しては、たとえ元金部分であっても、不法原因給付(民法第708条)を理由に、基本的には、一切返済しないという方針で対応します(最判平20・6・10裁時1416号20頁(28141393))。
なお、借入金以上の返済を行ってる場合は、過払い金が発生していることもありますが、090金融等では、返還請求の相手がわからないため、実効性において乏しいというのが実情です。
4 親族・勤務先・友人等に対するフォロー
ヤミ金融業者に親族や勤務先連絡先を知られている場合、親族や勤務先等に嫌がらせの連絡がされることがあることがあります。
とはいえ、嫌がらせを受けた場合でも、違法な業者との関係を断つという強い意志をもって、どんなに脅かされても言いなりになって返済することのないようにしてください。
また、事案によって異なりますが、事前に親族や勤務先にも事情を説明し、ヤミ金融業者からもし電話があっても電話には出ず、また、万一訪ねてくることがあった場合には、すぐに警察に連絡をするなどの対応方法について伝えるとともに協力を求めた方が良い場合もあります。
もし嫌がらせの電話があった場合は、通話内容を録音をし、後日の証拠としてもらうようお願いすると所轄の警察に被害届を出す際に有効です。
このように、悪質な取り立てや嫌がらせを行うヤミ金融業者と縁を切るためには、勤務先や親族への協力を求めたほうがよい事案もありますが、ヤミ金融業者側もビジネスでお金を貸し付けているのですから、一切返済はしないという強い姿勢でいつまでも返済しない債務者に対しては、時間と手間をかけても回収は見込めないと考え、諦めるのが一般です。
また、弁護士や司法書士などの専門家が介入すれば、より安全かつスピーディーにヤミ金融業者と縁を切れる可能性が高まります。
5 警察との連携、金融機関等への連絡
万一、ヤミ金融業者が相談者や親族、友人等の自宅などに取り立てにきて危害を及ぼすことを防止するため、関係者の所轄の警察署の生活安全課等には事前に連絡を取り、被害届を提出して連携を取るようにしてください。
警察に行く際には、上述の「ヤミ金融の借入先のリスト」を被害届と一緒に提出してください。
また、録音テープなどがあれば、それも脅迫や恐喝等があったことを示す証拠として提出するとよいでしょう。
加えて、ヤミ金融業者が返済等に利用している口座が判明している場合には、「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」に基づき、「不正請求口座情報提供及び要請書」を金融機関に送付し、取引口座の停止等の措置を求めることも重要です。
6 電話番号の変更
ヤミ金融業者は、1度ヤミ金融から借りた顧客に対して、勧誘を行い貸し付けをする傾向にあります。
そのため、ヤミ金融から借金をしてしまった方は、今後、二度と悪質な業者からの借り入れに頼ることのないよう、ヤミ金融業者に知られている携帯電話の番号や自宅の電話番号を変更することや着信拒否の機能を利用するようにしてください。
ヤミ金融業者がいつまでも同じ電話番号を使ってかけてくるとも限りませんし、しつこく勧誘されて再度借りてしまうことがないとも限りません。
そのため可能な限り、ヤミ金融業者に知られている電話番号は全て変更し、ヤミ金融業者の電話番号も消去してください。仮に、電話番号を変更することができない事情がある場合には、知らない電話番号には出ないようにするなど、十分注意することが重要です。
以上