当事者が死亡した場合の民事訴訟手続
民事訴訟の係属中に、当事者が死亡した場合、訴訟手続きは次のようになります。
1 民事訴訟法
(訴訟手続きの中断及び受継) 第124条 次の各号に掲げる事由があるときは、訴訟手続きは、中断する。この場合においては、それぞれ当該各号に定める者は、訴訟手続きを受け継がなければならない。 ⑴ 当事者の死亡→相続人、相続財産管理人、相続財産清算人、その他法令により訴訟を続行すべき者 ⑵ 当事者の法人の合併による消滅→新設合併設立法人、吸収合併承継法人 ⑶ 当事者の訴訟能力の喪失又は法定代理人の死亡若しくは代理権の消滅→法定代理人又は訴訟能力を有するに至った当事者 ⑷ 以下省略 |
○当事者が死亡した場合、当事者としての地位を承継した者がその訴訟を受継するまで、訴訟手続きは中断します。しかし、当事者としての地位を承継する者が存在しない場合は、もはや二当事者対立構造が維持できないため、訴訟は終了し、中断の問題は生じません。判例は、訴訟物たる権利関係が一身専属的であるためにそれを継承する者が存在しない場合には、その訴訟は当然に終了すると解しています(最大判昭42・5・24民集21巻1巻5号 1043頁)。(中略)
○当事者が死亡した場合、その訴訟の訴訟物となっている権利義務関係を実体法により相続した者がその訴訟を受け継がなければなりません。ただし、相続人が相続財産の管理権を有しない場合(遺言執行者[民 1012]がある場合など)は、相続人は受継することができません。(中略)
○被相続人がその財産を包括遺贈した場合、受遺者が遺贈を放棄(民 986)しないときは、受遺者は相続人と同一の権利義務を有する(民 990)ため、包括受遺者が訴訟を受継します。(中略)
○訴訟物となっている権利が特定遺贈の目的になっている場合で、遺言執行者がいるときは、遺贈の効果は物権的(遺贈者死亡と同時に直接に権利移転の効果が生じる)であると解されているため、受遺者が遺言執行者を介することなく直接的に訴訟を受継します。(以下略)
2 民事執行法
1 判決確定後、強制執行の開始前に当事者が死亡した場合は、次のようになります。
第27条 省略 ➁ 債務名義に表示された当事者以外の者を債権者又は債務者とする執行文は、その者に対し、又はその者のために強制執行をすることができることが裁判所書記官若しくは公証人に明白であるとき、又は債権者がそのことを証する文書若しくは電磁的記録を提出したときに限り、付与することができる。 ➂~➄省略 |
2 強制執行の開始後に当事者が死亡した場合は、次のようになります。
(債務者が死亡した場合の強制執行の続行) 第41条 強制執行は、その開始後に債務者が死亡した場合においても、続行することができる。 ➁前項の場合において、債務者の相続人の存在又はその所在が明らかでないときは、執行裁判所は、申立てにより、相続財産又は相続人のために、特別代理人を選任することができる。 ➂省略 |
○債務者が死亡し、その相続人に対し強制執行をするには、相続人に対し承継執行文を得て強制執行をしなければならないのが原則であるところ(民事執行法第27条第2項)、強制執行の開始後に債務者が死亡したときは、債権者側の利便を考えて、そのような手続きを経るまでもなく、手続きを続行することができるものとされています(同法第41条第1項)。
以上