競業・利益相反取引の規制
会社が所有する不動産を取締役に譲渡(売買・贈与)等をし、その不動産の名義変更をする場合は、所有権移転登記の申請書に「その取引について会社の承認を得たことを証する書面(株主総会議事録又は取締役会議事録)」を添付する必要があります。
そのため、以下に該当する場合、当該取引について株主総会又は取締役会の承認を得たことを証するために、株主総会議事録又は取締役会議事録を作成しなければなりません。
利益相反取引の規制の趣旨
会社法は、会社財産の保護の観点から、取締役と株式会社の取引を「競業取引」と「利益相反取引」に二分し、これに該当する場合、取締役は「株主総会」(取締役会設置会社の場合は「取締役会」)において、その取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない旨規定しています。
①「競業取引」の規制
→取締役がその地位に基づいて会社の事業に関して取得した知識、ことに得意先の状況等に関する知識を、会社と競合関係にある自己又は第三者の事業(例えば、自分が代表取締役をしている会社の事業)のために利用して、会社に損害を与えることを防止する趣旨です。
②「利益相反取引」の規制
⑴直接取引
→取締役(代表取締役に限らない。)が、当事者として、又は他人の代理人・代表者として会社と取引をすること。
⑵間接取引
→株式会社が取締役の債務を保証する等、株式会社が取締役以外の者と取引をすることにより、取締役と会社の利害が相反することとなる取引をすること。
→上記⑴、⑵はいずれも取締役が会社の利益の犠牲において自己又は第三者の利益を図ることを防止する趣旨です。
以下、条文を挙げます。
(競業及び利益相反取引の制限) 会社法356条1項 ① 取締役は、次に掲げる場合には、株主総会(取締役会設置会社の場合は取締役会。会社法365条1項)において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。 ⑴ 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。 →競業取引 ⑵ 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。 →利益相反取引(直接取引) ⑶ 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。 →利益相反取引(間接取引) ② 民法第108条(自己契約及び双方代理等)の規定は、前項の承認を受けた同項第2号又は第3号の取引については、適用しない。 →承認がない場合は無権代理の問題になるという意味。 |